こんにちは!
獣医師のニャン太です!
妻の妊婦検診に同行してきました。
今日は超音波を使った検査でしたが、先生に、
「この白く見えるのが胎盤ねー。ちょっと前置胎盤になってないか内診で確認するねー。」
とサラッと伝えられ、妻は内診台へ…
内診といっても経膣超音波検査なんですが、そこでも、
「この白く見えるのが胎盤ねー。これが今子宮の入り口に見えてて、いわゆる前置胎盤状態。これがあると帝王切開だけど、週数が進むと奥に下がってくることもあるから、経過見ましょうねー。」
これまたサラッと伝えられて検査終了。
「んじゃ、次5週間後ねー。」
て、いやいや、「前置胎盤」って何ですかい?
帝王切開って軽ーく言われてもわけわからんですよ!
診察終わってしまったので自分で調べてみることにしました。
……
意外と大変そうな感じじゃん!
ということで忘れないうちにまとめておきます。
前置胎盤とは?
前置胎盤とは
胎盤が正常より低い位置に付着し、胎盤が子宮の出口(内子宮口)にかかっていたり覆っていたりする状態を「前置胎盤」といい、その頻度は、全分娩の0.3~0.6%といわれています。また、前置胎盤のうち5~10%では、胎盤と子宮が癒着して胎盤がはがれない「前置癒着胎盤」となる可能性もあります。
胎盤は、お母さんと赤ちゃんをつなぐ血液・酸素・栄養のとても豊富な組織です。前置胎盤は、胎盤が赤ちゃんよりも子宮の出口付近に位置しているため、ほぼ100%帝王切開で分娩となり、お母さんにとっても赤ちゃんにとっても危険性の高いハイリスク妊娠なのです。
簡単に言うとこうです。
日本人は毎年6000人が前置胎盤で生まれます。その前置胎盤のなかでも600人の妊婦さんは胎盤と子宮が剥がれにくいことがあるので、大量出血や子宮損傷のリスクがあります。絶対に帝王切開じゃないといけません。最悪子宮を失います。
……
いやいや、何を言ってるですか?
妊娠出産するだけで最悪子宮を失う?
怖すぎますよね!?
前置胎盤の原因は?
前置胎盤の原因ははっきりとは分かっていません。
しかし、子宮の炎症等によって、胎盤を本来の位置に保てないことが発症の一因になることが分かってきています。
前置胎盤の発症メカニズムの詳細については、まだよくわかっていませんが、流産手術などにより子宮の内膜が傷ついたり、炎症などが起きると、前置胎盤も起こりやすくなると考えられています。つまり、高齢妊娠、 喫煙、多産婦(1人以上お産をしていること)、多胎(双子以上)、帝王切開の既往、流産手術や人工妊娠中絶術既往、その他子宮手術の既往などが原因として挙げられます。
近年では、妊娠の高齢化、不妊治療の普及、帝王切開分娩の増加などにより前置胎盤の頻度も増加しています。特に帝王切開については、その頻度が増すごとに「癒着胎盤」の発生率も上昇することが知られています。
しかし、私の妻の場合、手術の経験があるわけでもなく、特別高齢妊娠というわけでもありません。タバコは吸いませんし、そもそも初産です。
ある程度のリスクは分かっていても、はっきりとした原因は分かっていないのが現状ですね。
一般的に、胎盤は、受精卵が着床した場所に作られるとされています。
多くは子宮底部で、体の「上の方」に作られます。
しかし、何らかの理由で子宮口の近く、体の「下の方」に胎盤が作られてしまうことがあります。
この場合「前置胎盤」と呼ばれ、母子ともにリスクの高い出産になってしまいます。
おそるべし、前置胎盤!
前置胎盤の自覚症状は?
前置胎盤は、初期ではこれといった自覚症状はないようです。
しかし妊娠28週以降(妊娠8か月以降)で、突然の出血(警告出血とも言う)や大量の出血が起こることがあります。
これは、お母さんの体が出産準備をはじめ、子宮口が開き始めると、血液をたくさん含んだ胎盤が子宮の壁から一部はがれてしまうために、出血が起こります。
出血の量が多ければ、当然お母さんにも赤ちゃんにも危険がおよんでしまうので、すぐに帝王切開の手術が必要になります。
前置癒着胎盤とは?
体の中で臓器と臓器がくっついてとれなくなることを「癒着」と言います。
本来、子宮と胎盤は、優しくひっぱることで簡単にはがれますが、子宮と胎盤が癒着してしまうと、はがれにくくなり、無理にはがそうとするとお互いを傷つけてしまいます。
前置胎盤の10人に1人が、子宮と胎盤がはがれにくい(はがれない)状態です。
こうなると、帝王切開の時に、赤ちゃんは取り出せても、胎盤が残ってしまったり、胎盤が何とかはがれても、子宮を傷つけてしまう可能性があります。
赤ちゃんがいない状態で胎盤が残ってしまうと、子宮の炎症や感染症の原因になり、子宮が元に戻らなくなってしまいます。
胎盤によって子宮が傷つき、出血が止まらなくなってしまった場合、お母さんの血液が少なくなってしまい、命の危険が及ぶので、子宮を切除する必要が出てくることがあるんです。
当然、子宮がなくなれば、次に赤ちゃんを授かることができなくなってしまいます。
前置胎盤かもしれないと言われたらどうしたらいいの?
妊娠発覚時から、定期的に検診を受けている妊婦さんは、妊娠4~5か月の時に、私の妻のように、
「前置胎盤かもしれないねー」
と言われることが、まあまあ良くあるみたいです。
前置胎盤は、本来、妊娠が進んで子宮が大きくなってきたときに、子宮口の近く「下の方」に胎盤がある状態を指します。
しかし、胎盤が完成しかかった妊娠4~5か月では、子宮はまだ手のひらくらいの大きさで、胎盤の正確な位置は、検査で分からないことが多いんです。
それでも、一般的な位置より「下の方」に胎盤が見られるような場合に、先生は、
「前置胎盤かもしれないねー」
と、念のためお母さんに伝えるようにしていることが多いのです。
突然出血したり、緊急帝王切開になってからでは、責任問題になりますからね。。
ちなみに、妊娠19週までに「前置胎盤かも」と言われた妊婦さんのおよそ90%が、後々の検査で胎盤の位置に問題のないことが分かったというデータがあります。
一方で、25週を過ぎてもなお「前置胎盤かも」と言われる場合には、出産のときにトラブルになるケースが多いので、「予定帝王切開」になることが多いのです。
まずは、しっかりと経過観察をしてもらうことが大切ですね。
前置胎盤の診断がついてしまったら?
残念ながら、現在の医学では、前置胎盤を正常位置に戻す治療はできません。
前置胎盤は赤ちゃんのお腹の中での成長には影響しないようなんですがなるべく安静に過ごして、出血が起こりにくいようにすることが重要です。
夫婦の仲良しも控えます。
前置胎盤は、周産期に母子のリスクが通常より高くなります。
そのため、「予定帝王切開」により、通常より少し早めに出産をすることがほとんどです。
帝王切開の手術では、多くの出血が予想されるので、あらかじめお母さんの血液を少しずつ貯めておいて輸血に利用したり、急な輸血に備えて適合検査をしておいたりする必要があります。
出血がなければ、とにかく安静を意識して、妊娠32週(妊娠9か月)を過ぎたころから入院をして、なるべく赤ちゃんがお腹の中に長くいられるよう、時期を見はからって帝王切開にのぞみます。
もし、出血が起こるようであれば、止血剤を使いながら、なるべくお母さんの体に負担がかからないよう、妊娠の継続を試みますが、出血量が多かったり赤ちゃんが弱ってきてしまうようだと、緊急帝王切開が必要になります。
一般的に正産期は37週~ですが、前置胎盤の場合は37週以前、平均34~35週での出産になるケースが多いようです。
まとめ
前置胎盤は誰でも起こる可能性がある。
妊娠期前半は本当に前置胎盤かどうかわからない。
出産は、原則帝王切開。
出血量が多い場合は、母子ともに命の危険がおよぶ。
出血が止まらなければ、お母さんの命を優先して子宮の切除をする場合がある。
前置胎盤|ニャン太の考え
現状、「本来子宮の奥の方で着床する受精卵が、子宮口の近くで着床した場合、前置胎盤になる」ということはわかっています。
そもそも、子宮口から受精卵が外に出てしまうと、妊娠自体なくなってしまうわけなので、
「赤ちゃんが頑張ってお母さんにしがみついてくれた結果」
ということなのかもしれませんね。
最近は検査機器の発達により、前置胎盤の早期発見が可能になり、十分にリスクに備えた出産ができるようになりました。
人よりリスクが高いと知ると、それだけで不安な気持ちでいっぱいになってしまいますが、しっかりと医療機関、ご家族や周囲のサポートを受けていただいて、これまで元気に育ってくれた赤ちゃんのためにも、とにかくお母さん自信を大切にしていただけると良いなと思います。
お付き合いありがとうございました。