犬の起源を考える

こんにちは!

獣医師のニャン太です!

 

今回は犬の起源について少しお勉強の時間です。

何万年の昔から、今みなさんご存知の犬になるまで、とても長い時間が流れています。

 

犬との生活を考える上で、この過去の長い長い時間のことを無視してはいけません。

 

「犬の祖先は狼」という話の落とし穴

「犬の祖先は狼です」

よく耳にする言葉ですね。

 

特に最近はテレビやペットショップ、ホームセンターなどで流れているドッグフードのコマーシャルでよく耳にする機会が増えたような気がします。

 

「犬の祖先である狼の食事に合わせて作られたスペシャルフード」

 

みたいな使い方がされています。

 

実はこれ、落とし穴があるのをご存知ですか?

たしかに生物学的にはイヌの祖先はオオカミであるとされ、分類上もタイリクオオカミの亜種であるとされています。

遺伝子の解析が盛んな今時の研究結果ですから、何も別にこれが実は間違っているんですよとか、そういう話ではありません。

 

ただ、何となく「犬の祖先は狼です」と聞くと、あなたは今現在おうちやご近所で見かける犬が、大昔はテレビや動物園で見て知っているような、あの狼だったんだなーと思ってしまいますよね。

 

これが違うんです。

 

え?さっき違わないって言ったじゃないですか?

 

難しいですよね。

 

たしかにイヌの祖先はオオカミなんです。でも、今あなたがイメージする狼は、今現在生き残っているオオカミの仲間です。

 

イヌの祖先となったオオカミは、今あなたが想像する狼とは別の生き物なんです。

 

あとでまた詳しく説明していきますね。

 

「犬は人間が野生の狼を家畜化して作った」という話の落とし穴

「犬は野生の狼を人間が長い年月をかけて人間の都合の良いように品種改良して作った」という話、聞いたことありますよね?

 

この話にも落とし穴があります。

 

「野生の動物を長い年月をかけて人間の都合の良いように品種改良する」というのを「馴化」または「家畜化」といいます。

 

そしてイヌは誰しもが認めるヒトによる家畜化第1号動物です。

 

ここまで読んで、またあなたは、

え?だから人間が狼を家畜化したんじゃないの?

と思いますよね。

 

ここで私が言いたいことは、「狼を家畜化した」と聞くと、あなたはテレビで見るような狼を古代の人類たちが一生懸命に手なずける様子を想像しますよね。

これが違うんです。

 

私たち現代人の祖先が誕生したのが今から20万年以上前。

彼らが古代のオオカミの生息するユーラシア大陸に進出したのが7万年前。

初めて彼らとオオカミではなくイヌらしい生き物との生活の痕跡が確認されたのが3万5千年前と言われています。

 

その中で、イヌの馴化がなされたのははっきりわかっていません。4万年前とも1万5千年前ともいわれています。

 

興味深いことにイヌの遺伝子がオオカミの遺伝子と違うものに変わったのは13万5千年前だとする説もあります。

 

とんでもなく大昔ですよね。

 

家庭の犬も、野山をかける狼も、共通の祖先から今の姿になった

少し想像してみてください。

何万年もの昔、私たちの祖先は、今のように頑丈な家や、拓けた町はなく、身を守る武器なども限られた状態でした。

 

当時のオオカミも今のオオカミと同じくらいの体格で、雄は大きなもので体重50kgになることもあります。

これは当時の人類の成人と同じくらいの体格です。

オオカミの筋力は人間の筋力と比べ物にならないくらい強いので、まともに戦って勝てるような相手ではありません。

 

当時の人類たちは今よりもっと野性的で、生存本能にたけていたはずです。

そんな彼らが、どうして命を落とすリスクをとって、わざわざ屈強なオオカミを家畜として従える必要があったのでしょうか?

 

野性の大人のオオカミはとても警戒心が強く、仮に力づくで捕まえられたとしても、とても人間の手に負えるような動物ではありませんよね。

オオカミは学習能力にたけていて、一度危険な目に合うと同じ場所には近づかなくなります。

 

大人がだめなら子供のオオカミはどうでしょうか?

子供のオオカミは愛くるしい見た目で警戒心も強くなく、子供のうちから育てれば、何となく人に慣れてくれるような気もします。

 

しかし、子供のオオカミは大人のオオカミが大切に巣穴で守っていますので、人間がわざわざ捕まえに行くメリットはなさそうですよね。

 

仮にたまたま群れからはぐれた子供のオオカミが人間の手で保護されたとしても、「家畜化」とまでは行きません。

人になついてペットのようになったとしても、その後の繁殖が人の手でされない限りは、そのオオカミが死んでしまえばそれでおしまいです。

いくらそのオオカミがかわいくて、あいちゃくがあったとしても、その子の子供が欲しいがために、命をとして大人のオオカミと「お見合い」させに行くとは、ちょっと考えにくいですよね。

 

牛や馬のような草食動物ならともかく、狼のようにな人間に近い体格の大型の肉食動物をいくら長い年月かけたからといって(そもそもスタートができないので)、家畜化することはできないんじゃないかと思います。

 

じゃあ、どうして何万年も昔に、人類は家畜としての犬を誕生させることができたのでしょうか。

 

今現在、分かっている答えは「家畜化しやすいオオカミがいた」ということなんです。

 

イヌになったオオカミは、今の犬に近い性質を、人類と出会った大昔から持っていたのではないか、と考えられています。

 

犬と狼の違いは「人が好き」ということ

犬と狼の1番の違いは、「犬は人が好き」だということです。

 

遺伝子のレベルでもみても、犬にはオオカミにみられる攻撃性や警戒心のDNAの変化や欠如がみられます。

これは最近の研究で分かってきたことです。

 

犬の祖先も、「人が好き」だったでしょう。

彼らは私たちの知る狼とは明らかに違います。

 

以前の動物行動学では、「犬にとって飼い主は狼でいう群れのリーダー(=アルファ)であり、だから人間に従う」というように考えられてきました。

しかし、今では狼にない本能=「人が好き」を犬が持っていることがわかり、犬は「人が好きだから人に従う」のではないか考えられています。

 

たしかに、私は、いままでに動物病院でたくさんの犬とご家族の関係を見てきましたが、この言葉はぴったりなのではないかと思うのです。

あなたのおうちのワンコさんはどうですか?きっとあなたのことが好きだから、あなたと一緒に生活をしていると思うんです。

 

イヌになったオオカミはどんなオオカミだったの?

これ気になりますよね!!

 

実際にどうだったかは、今から何万年何十万年前のことですので、もう誰も見ることはできません。

 

しかし最新の遺伝子の研究により、イヌの祖先に近いのでは?と噂されている動物がいます。

 

その動物がこちら!

 

ジャーン!

 

え?

 

アハアハ!

 

あれ?

 

なんと、ご存知「柴いぬ」ですねー!

 

なぜ、犬の祖先に近いと言われるのかというと、2012年にナショナル・ジオグラフィックにこんな研究結果が発表されたからなんです。

 

http://ngm.nationalgeographic.com/2012/02/build-a-dog/dog-families-graphic

 

この研究によると、世界の犬種のなかで柴いぬが一番狼の遺伝子に近いことが書かれています。

ここですここ!

WOLFLIKEと書かれている赤い部分が多ければ多いほど狼の遺伝子と共通する部分が多いんです。

狼と共通のの遺伝子を多く持っている犬種。トップは「Shiba inu」!

そう、「柴いぬ」ですよね!

 

 

さて、「柴いぬ」が狼に近いということは、犬の祖先にも近いんじゃないか、と思いますよね。

つまり、柴いぬはより犬の祖先に近いということではないでしょうか。

 

これは、あくまで私の推測ですが、大昔に人間とともに生活をすることを決めた犬の祖先は、「柴いぬ」のような、少し小柄で愛らしく、どこか間の抜けた憎めない「オオカミ」だったのではないでしょうか。

 

私たちの祖先が、そんな彼らと一緒にいたいと思ったのも、なんだかうなずけませんか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です