こんにちは!
獣医師のニャン太です。
実は私の妻が妊娠12週で妊娠糖尿病と診断されました。
ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、この妊娠糖尿病、別に珍しい病気ではありません。
「あー私も大変だった」
「友達がそれで苦労したみたいだよ」
ご自身でご経験された方や、周囲に経験者がいるという方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。
そうはいっても、もしも初めての妊娠、ワクワクドキドキしながら行く定期検診で、ある日妊娠糖尿病ですと言われたら正直戸惑いますよね。
私も妻も、事前にある程度知識はあるつもりでしたが、それでも、実際に診断されて、戸惑いや葛藤がたくさんありました。
ここでは私が妻の妊娠糖尿病をきっかけに調べたことや、妻の苦労、夫婦での体験を忘れないようにまとめていこうと思います。
リアルタイムで随時更新していきます。
よろしくお願いします。
目次
妻が妊娠糖尿病と診断される
私の妻は妊娠が発覚してすぐに、家から車で10分程の産科のある総合病院にかかることになりました。
妊娠8週で1回目の検診。その時採血をして、次3週間後の2回目の検診で結果の話を聞きました。
先生
超音波検査で赤ちゃんが順調で、ホッとひと息つく間もなく受けた説明がそれでした。
さっそく次の週に検査の予約を取りました。
ちなみにちょっと高めに出ちゃってるという実際の結果がこちら
検査項目 | 結果値 | 参考値(単位) |
血糖 | 105 | 70-110(mg/dL) |
ヘモグロビンA1c(NGSP値) | 5.0 | 4.6-6.2(%) |
これを見て、なんだ、これくらいなら全然大丈夫そうじゃん!と、正直高をくくってたんですけどね笑
ところが、現実はそんなに甘くないものでした。
詳しく検査=75gブドウ糖負荷試験
検診の血液検査で血糖値がやや高めと言われた妻が、次の週に受けた詳しい検査というのが「75gブドウ糖負荷試験」でした。
簡単に言うと、この検査は流れはこんな感じです。
①お腹を空かせて採血。血糖値測定。
②75gの甘いブドウ糖が入ったサイダーみたいなのを飲む。
③1時間後採血。血糖値測定。
④そのさらに1時間後、また採血。血糖値測定。
全部で3回採血しますよ!大変ですよ!特に普段健康診断の採血で何度も刺されるような方だと…ね?わかりますよね。
検査前日夜9時以降は絶食ですよ!検査が終わるまで食事はできませんよ!つわり中の妊婦さんには検査当日地獄のような朝が待っています。
検査で飲むサイダー(みたいな検査用薬)は、程よく甘くて(ラムネとか三○矢サイダーほどは甘くない)、意外と空腹時には飲みやすいですが、とにかく量が多い!妻が検査を受けた病院では350mlくらいを一気に飲まなくてはいけませんでした笑
*検査基準では5分以内に飲み切るとなっていますが、実際には次の検査もあったりしてゆっくり飲んでられません。病院や検査機関で量は違うようです。
そしてこの検査で、
「妊娠糖尿病です」
と診断を受け、その日のうちに内科送りになってしまいました。。
ちなみに、私の妻の結果はこうでした。
検査項目 | 結果値 | コメント=ボーダーライン | 参考値(単位) |
血糖 負荷前 | 95 | 92 | 60-110(mg/dL) |
血糖 負荷後60分 | 163 | 180 | |
血糖 負荷後120分 | 160 | 153 |
コメントのところは妊娠糖尿病の診断基準のボーダーラインです。このボーダーラインを結果値が超えてしまうのはもちろん、踏んでしまってもアウトです。
上の結果値の太字になっている部分は、右のボーダーラインを超えてしまっていますよね。
このようなアウトがなんと1項目でもある場合、妊娠糖尿病の診断が下り、まるで凶悪犯を裁くかのように、執行猶予もなく強制的に内科送りになります。
これがけっこうヘコむんですよねぇ。。。
そもそも妊娠糖尿病って何なの?
妊娠糖尿病とは、もともと糖尿病ではないのに、妊娠をきっかけに「糖尿病のような状態」になってしまう病気のことです。
「ような状態」というのはともかく、「糖尿病」は、簡単に言うと「血糖値が上がってしまう病気」ですね。
ただし、単に血糖値が上がっただけでは、最初は特に体の調子の変化は見られません。
ですから、妊娠期の定期検診で血糖値の項目がひっかかって、追加で検査を進めていく上で、そこで初めて妊娠糖尿病だとわかることがほとんどだそうです。
でも、妊娠前に定期的な健康診断を受けていなかった場合、血糖値の項目がひっかかって検査を進めていくと、実は「ホンモノの糖尿病」でした、というケースもまれにあるようです。
定期的な健康診断は大切ですね。
「ホンモノの糖尿病」は妊娠の有無にかかわらず血糖値が上がってしまう状態ですが、妊娠糖尿病は出産が終われば「糖尿病のような状態」でなくなります。
なぜ妊娠すると妊娠糖尿病になってしまうことがあるのか?
妊婦さんの1割以上が妊娠糖尿病を発症してしまうと言われています。
もっと具体的に例をあげると
小学校に児童30人のクラスがあると、そのうちの4人の児童のお母さんはその子を妊娠中に妊娠糖尿病だったかもしれない
ということです。
決して他人事ではありませんよね。
なぜ、糖尿病でない女性が、妊娠したことで「糖尿病のような状態」になってしまうのでしょうか。
原因は大きく2つあると考えられています。
妊娠特有のホルモンの変化 と、 妊婦さんの体質 です。
妊娠糖尿病を起こすホルモンの変化とは
妊娠4~5か月になると、赤ちゃんを守る胎盤が出来上がってきます。
胎盤は、お母さんから赤ちゃんに「へその緒」で栄養を運ぶだけでなく、妊娠が順調に進むために必要なホルモンをお母さんの代わりに作っています。
お母さんの黄体を維持するhCG
赤ちゃんに栄養をスムーズに運べるようにするhPL
月経を止めて妊娠を維持する黄体ホルモンプロゲステロン
子宮の機能を支え、乳腺を発達させるエストロゲン
この中でhPL、プロゲステロン、エストロゲンには血糖値を上げるはたらきがあります。
エストロゲンはどちらかというと血糖値を下げる方向にはたらきます。
hPLは赤ちゃんに栄養をスムーズに運ぶためのはたらきをします。
赤ちゃんの成長には糖分が欠かせません。
お母さんの血糖値が低いと、なかなか赤ちゃんに糖分を運んであげることができませんよね?
だから、お母さんの血糖値が下がらないようにして、赤ちゃんにたくさんの糖分を送ってあげようとします。
プロゲステロンやエストロゲンは「ステロイドホルモン」というホルモンです。
このステロイドホルモンは、たくさん作られるとそれだけで血糖値を上げるはたらきをしてしまいます。
この他にも、妊娠中は母体自身を守るためにコルチゾールというホルモンも多く作られます。
コルチゾールも「ステロイドホルモン」の仲間です。
さらにコルチゾールはストレスホルモンと呼ばれています。
獣医の大学では、「とうそうホルモン」だと習いました。
「とうそう」とは「闘争」であり「逃走」です。
人間が野性だったころ、ライオンやクマみたいな強い敵と出くわしたらすぐに身を守らないといけませんよね?
敵と闘って身を守るか、敵から逃げて身を守るか…
いずれにしてもたくさんエネルギーを使いますよね?
そのエネルギーのもとになるのが糖分で、つまり血糖値のことです。
そのためコルチゾールは強力に血糖値を上げるホルモンの一つなんです。
まあ、現代人はライオンやクマから身を守る機会はほとんどありませんが、様々なストレスから身を守るためにこのホルモンを持っています。
つまり、ストレスがかかると血糖値は上がりやすくなる
妊婦さんはストレスを感じやすい状態にある
ということですね。
身を守るための自然な体のはたらきです。
妊娠糖尿病になりやすい体質とは
妊娠すると血糖値が上がりやすくなる、というのは分かりました。
でも妊娠糖尿病にならない人もいるのはどうしてかというと、それは妊婦さんの体質が影響しているからだと言われています。
甘いものを食べ続けても永遠に血糖値が上がっていかないのは、体の「膵臓(すいぞう)」という部分から「インスリン」という血糖値を下げるホルモンが出ているからです。
ホルモンの中で血糖値を下げることができるのは、このインスリンだけです。
逆にインスリンが足りなくなってくると、血糖値が上がってしまいます。
たとえば、
もともと遺伝的にインスリンを作る「すいぞう」のはたらきが弱い とか、
何らかの理由でインスリンを作る「すいぞう」が元気じゃなくなっている とか、
そういう妊婦さんは妊娠糖尿病になりやすいみたいなんです。
あとは、ストレスがかかると血糖値が上がりやすくなるので、
ストレスの影響を受けやすい妊婦さんも妊娠糖尿病になりやすいみたいです。
妊娠するって、大変ですよね。。
妊娠糖尿病の治療が始まる!
まずは1日4回血糖値を測る
妊娠糖尿病の治療は「家で」日々の血糖値を測るところから始まります。
朝起きてからすぐ(空腹時)と、朝昼晩の食後2時間の血糖値を測ります。
写真は血糖値を測る機械(左)と採血用の器具(右)です。
測る機械や採血の器具はそれぞれいろんな種類がありますが、妻の場合は病院で貸し出してもらえました。
これで1日4回血糖値を測ります。
血糖値を記録する
測った血糖値を手帳に記入していきます。
続きます!